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奥に立ち並ぶ団地のような建物で、茅台酒を熟成する(貴州茅台酒本社) 「国酒、茅台(マオタイ)酒」――。中国でテレビCMを見ない日はない貴州茅台酒は、周恩来首相(当時)が1950年代に「国酒」に指定し、国賓をもてなす高級白酒というブランドを確立した。中国の経済成長とともに宴会での高級白酒の需要が急拡大している。株式市場では1株100元(約1200円)を超える値がさ株として注目を集める。 中国西南部の貴州省貴陽から車で4時間。川に面した丘陵にある茅台鎮には、貴州茅台酒の工場群が広がっていた。町は熟成用のカメを安置する中層のビルが立ち並び、麹(こうじ)の香りが鼻をくすぐる。貴重な原酒を盗まれないように武装警察が巡回していた。 白酒は高梁(こうりゃん)など穀物が主原料で客をもてなす宴会の乾杯には欠かせない酒だ。そのなかでも茅台酒は高級酒として知られ、通常品は一瓶500ミリリットルで2000元程度はする。 貴州茅台酒の前身企業は50年代に政府に接収された現地の3つの酒蔵が統合して誕生。国営企業として経営してきたが、改革開放政策により99年に株式会社化。2001年に上海証券取引所に上場した。「株式会社化当時は全国の白酒シェアでは5~6番手だったが、10年の売上高は99年の10倍強とトップクラスになった」(親会社の貴州茅台酒廠の季克良・名誉董事長)。11年1~9月期の売上高は136億元と前年同期に比べて46%増加。経済成長に伴い高級志向を強める消費者の嗜好と合った。 11年から始まる5カ年計画では、15年までに売上高を10年実績の4倍強となる500億元以上を目指す。成長戦略を好感し、上海市場に上場する貴州茅台酒の株価は11年の1年間で5%上昇し、全銘柄の平均である上海総合指数が21%下落したのとは対照的だった。 同社が頭を痛めているのがニセモノの横行だ。季氏は「ニセモノは市中の5%にすぎない」と否定するが、「茅台酒の大半はニセモノ」(中国メディア)との見方が消えない。茅台酒は熟成期間が5年以上かかり、供給量が限定的で高額だ。ニセモノを高値で取引すれば業者にとってうまみが大きく、ニセモノが蔓延(まんえん)しやすい。茅台酒側もブランド価値が下がるのを手をこまねいているわけでは 品不足によるニセモノの蔓延を解消するプロジェクトも動き出した。年間生産量は3万トン強で推移しているが、10億元を投じて新たに2500トンの生産能力を増強する計画を明らかにした。これまでほとんど手掛けてこなかった直販体制の整備にも乗り出した。 高級品だけでなく、熟成年数が短く価格が100元強と手ごろな「茅台王子酒」など割安ブランドのてこ入れも進めている。昨年12月には8億元強を投資し、王子酒の生産能力を引き上げる計画も公表した。 同社にとっては「接待費」が批判されていることも気にかかる点だろう。政府関係者の高額な接待費がやり玉に挙がり、支出抑制が唱えられている。茅台鎮にある博物館に陳列してある高級白酒の瓶には、贈答用に発注した共産党系組織の名前が印刷されていた。接待イメージの克服も必要になるかもしれない。 〈記者の目〉白酒以外での成長課題 高級白酒ではトップブランドの貴州茅台酒だが、ほかのビジネスでは苦戦している。昨年、貴州省を中心に展開していたグループ会社の茅台ビールの株式の7割を中国最大手の華潤雪華ビールに売却。一方、昨年9月にワイン事業への参入を明らかにしたが、輸入物が席巻する中国市場での成功は未知数だ。 いかに茅台酒ブランドを活用して食品会社としての総合力を高めるのか。白酒ブームが続いているうちに新たな戦略の構築が求められるだろう。 (重慶=戸田敬久)