"0118東大、秋入学に全面移行 懇談会が早期実現を提言 入試は春、卒業まで4.5~5年 国・企業に協力要請 :日本経済新聞"

入学時期の見直しを検討していた東京大学(浜田純一学長)の懇談会が、学部の春入学を廃止し、国際標準である秋入学への全面移行を求める中間報告をまとめたことが17日わかった。入学試験は現行通り春に行う。国際化の推進と、入学前の学生に多様な経験を積ませることなどが狙い。中間報告は早期実現を求めており、東大は学内論議を活発化させ最終方針を決める。(秋入学総合面「きょうのことば」参照)=関連記事総合面に

 

中間報告(まとめ)が、他大学の入学時期や企業の採用活動、国家試験の実施時期などの論議に一石を投じるのは確実で、既に一部大学に追随の動きがある。懇談会は「検討と行動に『待ったなし』のスピード感が求められている」としているが、東大内には異論もあり、学内の合意形成に向け執行部の指導力が問われる。合意が得られた場合、実現は数年後になりそうだ。

懇談会は、現行の4月入学を「国際的に特異な状況」と分析。欧米の主要大学と同じ9月か10月にすれば、留学生の送り出し・受け入れをはじめとして学生・教員の国際流動性が高まるとした。4月入学で春学期(4~9月)が夏休みによって分断されている弊害を解消できるとも指摘した。

また、高校卒業から入学までの半年間(ギャップターム)に、多様な体験活動を積む「寄り道」を設けることで、受験競争で染みついた偏差値重視の価値観をリセットし、大学で学ぶ目的意識を明確化できるとした。

大学院は、春入学と秋入学の“複線化”が進んでいることや、他大学からの受け入れも考慮し、全面移行には慎重な検討が必要とした。

一方で(1)入学が半年遅れ、企業や官庁の春季一括採用が続くと、高校卒業から就職までの期間が5年に延び学生の負担が増す(2)企業の採用や公的資格試験などは4月入学が前提(3)休業期間が変わり学期中に入試を行うため大学の負担が大きい――などのデメリットも指摘。経済支援や、試験・採用の時期見直しなど社会ぐるみの支援を国や産業界に求めている。

成績優秀者の早期卒業制度の導入や修業年限の見直し、学部生の3~5割に海外留学や海外体験をさせるなど、秋入学に合わせた教育改革推進の必要性を強調。ギャップターム中の体験活動支援のため、秋入学を導入する他大学とのコンソーシアム(共同事業体)形成や産業界と協力した非営利組織(NPO)「体験活動推進機構」(仮称)の創設も提言した。

懇談会は、浜田学長の意向を受けて昨年4月に発足した。
▼ギャップターム 入学時期の秋への移行に伴い、春の入試から秋の入学までの間などに生じる期間。学生はボランティア活動や企業インターンシップ(就業体験)、海外留学などに充てられる。英国などでは大学入学前の学生らが同様の趣旨で「ギャップイヤー」を約1年取る慣行がある。

東京大学の「入学時期の在り方に関する懇談会」は中間報告(まとめ)で、秋入学への全面移行を提言した。国際的で高い課題解決能力を備えた人材を育てる狙いで、偏差値重視の価値観から脱却した新たな教育システムの構築も提唱する。学内での意思統一に加え、他大学が歩調を合わせるかどうかが焦点になる。(1面参照

文部科学省によると、世界215カ国の7割は秋入学。4月入学はたった7カ国で、中間報告は時期のずれが「学生や教員の国際交流を制約している」と強調。実際に東大の学部段階の外国人留学生は昨年5月時点で全学部生の1.9%にあたる276人、留学中の日本人学生は同0.4%の53人にとどまる。

国際性は大学の評価に直結する。世界の大学ランキングで東大は30位。アジアでは首位だが、留学生比率などの項目を重く見る傾向が強まっており、今後は順位を落とす可能性もある。

世界の有力大は優秀な学生や教員の獲得にしのぎを削っている。中間報告は「東大が実力と存在感を維持できるか強い危機感を禁じ得ない」とし、今のままでは大学間の競争を乗り切れないとの認識を鮮明にした。

現在の高校生は受験のための勉強が中心で受け身の学習姿勢が目立ち、大学で求められる「自ら課題を発見する学び方」が身に付いていないとも指摘。高校卒業から入学までのギャップタームに「学ぶ姿勢を転換させるインパクトある体験が必要」とした。秋入学移行は「よりグローバルでタフな人材」を育成する切り札となる。

ハードルは高い。まずは各学部の支持を得ることが欠かせない。中間報告は「各部局で建設的な議論が交わされ、適切な判断が主体的に下されることを強く期待する」とくぎを刺した。

在学期間が延び、就職や医師国家試験、国家公務員試験などでの不利が解消されなければ、高校生の東大離れが進む可能性もある。打開策は社会全体を巻き込んだ議論を起こし、資金支援や制度改革を進めることだ。

中間報告では社会の理解を得るため、偏差値重視から多様な体験や個性を尊重する教育システムに転換することを提唱する。新たな価値観では「寄り道」のギャップタームは多様性を高める機会と評価される。受験競争の頂点に立つ東大が率先して入試や教育改革に取り組むことで社会全体の改革を促す。

一部の有力大では東大に共鳴し、秋入学の検討組織を設ける動きが出ている。中間報告が指摘する通り、検討に時間をかけている余裕はない。

Tags: 03留学