"0123中国「第5世代」実力は未知数 今秋に党指導部交代 一党支配、広がる矛盾 :日本経済新聞"

【北京=島田学】中国共産党は今年秋、5年に1度の党大会を開き、現在の習近平国家副主席(58)を中心とする次期指導部の顔ぶれを決める。国際社会での存在感がますます高まる次の10年の中国を率いるのは、1966年からの文化大革命で10歳代後半に教育機会を奪われた「はざま」と呼ばれる世代だ。国内に多くの矛盾を抱える中で、大きな転換期を巧みに乗り切ることができるのか。彼らの指導力は未知数のままだ。

「私はすべてのことを地方で学んだ」。習氏は昨年末、北京に全国の党地方組織幹部を集め、自らの地方経験への自負をにじませた。父親の習仲勲元副首相が文化大革命で失脚し、16歳から7年間、地方での生活を余儀なくされる「下放」を経験した。最終学歴は名門・清華大学の卒業だが高校は出ていない。

乏しい海外経験

「反動分子」のレッテルを貼られるも苦労して周囲に認められ、20歳でやっと共産党に入党。当時の習氏の姿は、地味ながらも江沢民前国家主席(85)らの支持をじわりと広げ、最終的に次期最高指導者の座を射止めたその後の過程とも重なる。

習氏は毛沢東ら「第1世代」から数えて「第5世代」に当たる。苦労した世代だけに穏やかで世渡り上手だが、カリスマ性や独創性が不足。留学や海外経験に乏しく「外国との摩擦に過剰反応し、年々保守化する世論に安易に迎合してしまわないか」との懸念は、日米外交当局者で共通する。

そんな欠点を意識するかのように中国指導部は手を打ちつつある。既に党指導部の「68歳定年制」はほぼ根付いた。円滑な権力移行への意思を示すように、昨年12月の北朝鮮の金正日総書記の死去後、北京にある北朝鮮大使館を中国首脳が弔問した際には、胡錦濤国家主席(69)は習氏を、温家宝首相(69)は次期首相候補の李克強副首相(56)をそれぞれ伴った。海外経験では、習氏は2008年の副主席就任以降、約40カ国を訪問した。

ただ「第5世代」の指導部を待ち受けるのは、経済格差の拡大や根深い腐敗といった厳しい現実だ。深刻なのは、それらの問題がどれも共産党が事実上一党支配する政治体制に起因することだ。

共産党は規約で党を「労働者階級の先鋒(せんぽう)隊」と位置付け、企業家の入党を認めてこなかったが「第3世代」の江前主席が01年に企業家の入党を解禁。一時的な党勢拡大にはなったが、党の存在意義は根底から覆った。

昨年は石油大手、中国石油化工集団の蘇樹林総経理(49)が福建省長に、今年1月にも旅客機メーカーの中国商用飛機董事長だった張慶偉氏(50)が河北省長に、と企業と地方政府との“人事交流”が続く。

負の遺産一身に

「共産党は本当に労働者のための党か。企業家のためならもう要らない」。インターネット上ではこんな鋭い批判も目立つ。一党支配下で、ただでさえ集中しやすい富と権力の結びつきがさらに強まる。利権は世襲され、腐敗も横行。各地で相次ぐ労働者のデモは単なる経済格差への不満表明でなく、共産党一党支配の矛盾を問う動きだ。

だが「第4世代」の現在の胡・温体制は政治改革を先送りし続けた。「中国の特色ある社会発展方式を目指す」とし、一党支配の政治システムと資本主義経済の整合性を図ろうとするが、党内からは「それができたらノーベル経済学賞を取れる」と皮肉る声も漏れる。

習氏ら「第5世代」の指導部は、そうした過去の世代の負の遺産を一身に背負って発足する。ただ、習氏自身も高級幹部の子弟ら「太子党」の支持で上り詰めた。先代から積み上げられた仲間の既得権益を断ち切るだけの政治力はまだない。

中国では23日から春節(旧正月)休みに入る。世間のお祭り騒ぎをよそに、水面下では次期指導部のポスト争いを巡って、党幹部同士のあいさつ回りや陳情合戦も活発になる。ある元党幹部は「今や共産党による一党支配の維持と自分の出世だけが、政治の目的と化している」と嘆く。

中国経済は20年ごろに国内総生産(GDP)で米国を抜いて世界一となる勢いだ。「我々はまだ世界最大の発展途上国にすぎない」(習氏)。そう繰り返す中国からは世界をかじ取りする自覚はまだみえない。

<MEMO>習近平氏、次期国家主席に
中国は憲法で「中国共産党が中国を指導する」と規定し、事実上の一党支配体制を敷く。党指導部に当たるのは政治局常務委員で、現在は胡錦濤党総書記(国家主席)以下のトップ9人。政治局委員の68歳定年制を適用すれば、このうち7人が今年秋の党大会で退く。
次期指導部では、習近平国家副主席が党総書記(国家主席)、李克強副首相が首相に就任するとの見方が有力だ。他の主要ポストを巡っては、習氏を筆頭に高級幹部の子弟からなる「太子党」と、李氏ら党青年組織の中国共産主義青年団(共青団)出身者との争いがし烈だ。
指導部の人選は、1年以上前から関係者の評価などを幅広く聴取し念入りに進められる。現総書記の胡氏や次期総書記に内定する習氏だけでなく、江沢民前国家主席ら党の長老らの意見も聞き、根回しをしながら時間をかけて意見集約する。

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