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中国海運最大手、中国遠洋運輸集団(コスコ・グループ)が国際競争の厳しさに直面している。2011年通期は赤字を予想し、利益確保へアライアンス(連合)強化などコスト削減を急ぐ。国有企業に特有の経営感覚の欠如を見直し、真の企業体への脱皮を目指す。 米カリフォルニア州の港に停泊するコスコのコンテナ船=ロイター 昨年末、コンテナ輸送量で世界5位のコスコが主導し、7位のエバーグリーン(台湾)、16位の川崎汽船など計5社が共同でアジア―欧州航路を週12便運航すると発表した。互いに荷物を委託し合い、効果的な運航でコストを引き下げる。5社を結びつけたのは「欧州大手の攻勢に対する危機感」との見方が多い。 「メード・イン・チャイナ」の製品を世界中に送り届ける事業で成長したコスコにとって、アジア―欧州航路はドル箱路線だった。しかし、世界最大手のA・P・モラー・マースク(デンマーク)が昨年9月、同航路のコンテナ船を1社で毎日運航すると発表。すぐにスイスのMSC社とフランスのCMA―CGM社が「2位・3位連合」を組んで対抗した。各社の競争により最も値崩れが激しい航路となり、昨年は運賃が62%下落した。 その結果、香港市場に上場する子会社、中国遠洋控股(コスコ・ホールディングス)は11年1~6月期に27億5800万元(約335億円)の最終赤字を計上。赤字幅としては日本郵船の120億円(11年4~9月期)を上回る。株価は過去1年で60%下落した。 中国の海運業はコスコと中海集団の2社がほぼ独占する。政府の支援も受けるが、政府の決めた政策にも従わなければならない。07年には中国の天然資源の大半は中国籍の船で輸送しなければならないと指示。コスコは次々と船主と高額なチャーター料金で契約し、支払いに苦しんでいる。 業績の安定には収入源の多様化が必要だ。運賃下落がさほど大きくない大西洋横断航路やアジア域内航路を増やすほか、中国と南米を結ぶ新たな航路を開拓する。運賃が乱高下する海運と違い、寄港する船から定額の接岸料を徴収できる港湾事業にも期待をかける。 魏家福董事長は「海の上での稼ぎより、航行の両端の部分の方がもうかる」と語る。他社が運営する港に接岸料を払うくらいなら自社港に寄港する方がグループとしての出費は減る。この考えに立ち国内のほとんどの港に出資したほか、ベルギーやエジプトなどでも港湾権益を取得している。09年に100%の権益を取得したギリシャのピレウス港ではコスコの船団を寄港させたところ、すぐ黒字に転換した。 05年にコスコ・ホールディングスは上場しており、経営戦略では株主の意見にも耳を傾けねばならなくなった。海運業は事業規模が大きければ大きいほど有利な「スケールビジネス」の色彩を強めており、規模拡大のためM&A(合併・買収)が増えていきそうだ。 「国有」を理由に、他の民間企業との合併などに見向きもしなかったコスコだが、今後は既成概念にとらわれない経営判断が求められる。常に背中越しに政府の視線を気にする体制から脱皮できるかが問われている。 <記者の目>集団指導体制に移行 魏家福董事長は社内外で「キャプテン・ウェイ(魏船長)」と呼ばれる。本社11階にある「船長室」はブッシュ前米大統領、福田康夫元首相ら著名人との写真で埋まる。13年間にわたり不動のリーダーだった魏氏は昨年、総経理を後任に譲り、自らは新設した取締役会の代表に就いた。年末、その取締役会の初会合があり、5人の社外取締役が参加した。カリスマ船長の操舵(そうだ)から集団指導へ。岐路に立つコスコを象徴する人事だった。 (北京=森安健)