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2012年は人民元の上昇ペースが鈍る――。こんな見方が金融市場の主流になりつつある。 11年の人民元の対ドル相場の上昇率は4.7%程度だった。「(今年は)3%前後かと思っていたが、もっと低くなりそうだ」。中国科学院予測科学研究センターの汪寿陽主任は12年の上昇率を2%台半ばとみる。 人民元の上昇ペースが鈍るという観測が広がっている背景には、中国を含めた新興国に流れ込んでいた投資マネーの逆流がある。欧州債務危機でリスク回避に動く米欧の投資家が新興国から資金を引き揚げつつある。 これを裏付けるかのように、昨年11月から12月にかけて、人民元が1日あたり0.5%の値幅制限いっぱいまで売られる日が続いた。中国人民銀行(中央銀行)は外貨準備を取り崩し、元を買ってドルを売る市場介入を実施したもようだ。 交通銀行金融研究センターの鄂永健研究員は「中国経済への悲観論が後退すれば、元の売り圧力は収まる」とみる。とはいえ、貿易黒字や対中直接投資は減少傾向にあり、実需面からの元買いは期待しにくい。 物価抑制のために元高を演出する必要性も薄れている。中国政府は昨年、物価上昇を抑えるために元の上昇ペースを速めた面がある。元高が進めば輸入価格の下落などを通じて消費者物価指数(CPI)を押し下げる効果が期待できるためだ。だがCPI上昇率は昨年7月の6.5%から12月には4.1%まで低下し、すでに峠は越えた。 政治的な要因からも大幅な元の上昇は考えにくい。今秋の党大会では、胡錦濤総書記(国家主席)が習近平国家副主席に最高指導者の地位を譲るのが確実視される。それまでは社会の安定が最優先。輸出企業の痛手となる元高はできるだけ避けたいところだ。07年の前回党大会でも、大会が終わるまで元の上昇ピッチは速まらなかった。 だが元の上昇ペースが鈍れば、今秋に大統領選を控えた米国が黙っていない。国際不均衡の是正を求めて、中国への圧力を強めるのは確実だ。互いに内向きになった米中が、人民元を巡ってぶつかるシナリオも予想される。(北京=高橋哲史)