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中国家電大手の海爾集団(ハイアール)が成長持続へ新たな局面を迎えている。割安な人件費や巨大な国内市場という中国の利点を生かしてコスト競争力を高め、世界最大の白物家電メーカーに成長した。革新的な新商品を創造し、世界市場をリードする企業へと脱皮できるかが注目点だ。
「クラウド生活を実現する」。米ラスベガスで1月に開かれた家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」。ハイアールは最大級の展示スペースを確保し、インターネット経由でソフトを利用するクラウドコンピューティングを駆使した新製品群を展示した。
ハイアールは内陸の農村部まで販売網を整えている(四川省の販売店)
テレビやパソコン、タブレット端末で映像を共有し、洗濯機なども制御する仕組みを紹介。幹部は「メード・イン・チャイナで席巻してきたが、今後は『中国創造』(クリエイテッド・イン・チャイナ)で世界をリードする」と力を込める。
ハイアールは倒産状態だった国営工場が母体。張瑞敏・最高経営責任者(CEO)が1984年に責任者に就くと、品質重視を掲げて成長した。以前なら販売していた不良品76台を張CEOがハンマーで壊し、社員に品質の大切さを教えた。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)やパナソニックの経営手法を参考に、経営近代化を推進。品質確保や顧客対応を優先し、ライバルに差をつけた。全国の農村部まで自社の販売網を整備し、国内トップとなった。
さらに、大量調達をテコにコスト削減を進めた。中国の電子部品メーカーによると、ハイアールとの取引は納品から代金受け取りまでに通常より長い半年以上かかる。納入部品に問題があった場合に備えるとして、取引額2カ月分の預かり金も義務付けられる。
別の部品メーカー幹部は「取引開始時の価格は高いが、取引量が増えてハイアール依存が高まると値下げ要求が来る」と漏らす。こうして中国で培った品質と安さを武器に世界165カ国に進出し、24工場、10研究所を展開。英調査会社によると、世界の白物家電市場で2009年から3年連続でシェア1位を占める。
最近は技術力を重視し、中国政府がまとめた11年の技術開発センターの評価ランクで1位を獲得した。今後はCESで披露したクラウド関連などの新商品を世界市場に問うことになる。
昨年7月には、パナソニック傘下の三洋電機の白物家電事業を買収することで合意。三洋の事業基盤を使い、低価格だが品質面で劣る中国製品のイメージ脱却を目指す。
今月には、三洋から取得した「AQUA(アクア)」ブランドの洗濯機などが日本の家電量販店で並び始めた。「ハイアールを世界で最も信頼されるブランドにする」との張CEOの念願がかなうのか、勝負どころだ。
現時点では、ハイアールは投資家の評価が高くない。グループの上場企業がエアコン事業などを手掛ける青島海爾と、洗濯機部門の海爾電器集団の2社だけで、全体の詳しい財務が不透明なためだ。中国の証券アナリストは「世界大手ならば経営情報をもっと開示すべきだ」と注文を付ける。
<記者の目>企業統治の透明化必要
ハイアールは国有でも、個人所有でもない「集団所有制」の企業。政府が過去に国有化を試みたが、経営陣の反発で実現しなかった。社員が株式を所有している形で、「政府や株主のためではなく、顧客のために働く社員の意識作りにつながった」(幹部)という。
ただ、ハイアールに出資する社員持ち株会的な組織や株式割当の状況は不明確で、企業統治の根本的な改善が急務。創業時から二人三脚で会社を率いてきた張CEOと楊綿綿・総裁の後継者も課題だ。(北京=多部田俊輔)