"0521戻らぬ外国人、悩む観光業界 日本人に活路探る動き :日本経済新聞"
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東日本大震災や原子力発電所の事故の影響で外国人観光客が落ち込み、首都圏の観光施設は頭を抱えている。昨秋の羽田空港の国際化もあり、今や中国人をはじめとした外国人は主要顧客。経営への打撃は大きく、あの手この手で誘致を促すが、動きは鈍い。当面、外国人観光客が従来の水準に戻らないと考え、日本人に照準を絞るところも出てきた。
割引料金が受け、GW中には多くの日本人客が訪れた(京急EXイン品川駅前)
プリンスホテルはグランドプリンスホテル高輪(東京・港)の全宿泊室を休止し、レストランと宴会場などに営業を限定している。JR品川駅周辺にある同社の4ホテルの宿泊客のうち約3割が外国人。震災後にキャンセルが殺到したため、このうち一部を使わないことにした。
山梨県山中湖村にある中国人専用の富士山ガーデンホテル。1日300人が泊まるなどフル稼働だったが、「3.11」後は客足が途絶え、現在は休館中だ。
社長が中国行脚
このため、運営会社シーエイチアイ(東京・港)の露崎強社長ら幹部がこの2カ月間、中国の旅行会社を行脚。通常の3分の1の料金を提示し、系列の東京ベイプラザホテル(千葉県木更津市)を含めて125団体約4千人の予約を獲得。ようやく6月下旬に営業再開の見込みが立った。同社は「採算より、まずは日本が安全であることを実感してもらうことが先決」と強調する。
日本政府観光局(JNTO)によると4月に日本を訪れた外国人旅行客数は前年同月比62.5%減の29万6千人。「渡航自粛・延期の勧告が続いている」(JNTO)。5月に入り、多少戻っているようだが、震災前の水準にはほど遠い。このため、首都圏の観光地の苦戦が目立つ。
マザー牧場(千葉県富津市)は年間数千人の外国人が訪れるが、3月11日以降は「1、2組しか来ていない」。4月中旬~5月上旬に芝桜の名所として人気の高い羊山公園(埼玉県秩父市)も「今年は外国人客がほとんど来なかった」と肩を落とす。
観光ハイヤーのアウトドアテクノロジー(東京・江東)は外国人が主要顧客。4月の売上高は前年同月比で70%減少した。このため自社のホームページなどで銀座や渋谷など都内の観光スポットの現在の街並みを動画で紹介。東京が安全であることをPRしている。
外国人客の回復が見込みにくいと、その分、日本人客の獲得に力を振り向ける動きも出てきた。
割引料金で攻勢
「こういう機会がないと泊まれなかった。眺望がよく気分がいい」。横浜市に住む30代男性は今月、横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(横浜市)に初めて宿泊した。同ホテルは横浜市内在住・在勤者に1泊4750円と通常の8割引きで提供するキャンペーンを実施している。
かつては外国人が宿泊者の半分を占めていたが、震災後、一時まったく訪れなくなり、客室の稼働率は5割以下に。「まずはホテルににぎわいを取り戻すことが必要だ」(同ホテル)と日本人客向け低価格プランを相次ぎ提供。現在は7割台まで回復している。
4月29日に開業した京急EXイン品川駅前(東京・港)は昨年閉鎖したホテルパシフィック東京を改装したビジネスホテル。羽田空港から近いという立地もあり、開業前には中国人団体客の予約が多く入っていたが、他のホテル同様、キャンセルが相次いだ。このため5月末まで宿泊料金を25~35%割り引いたプランを販売。出張客らから人気だ。
プリンスホテルも東北の地酒がつき、料金を割り引いた宿泊プランなど発売。国内客の予約が増えているため、6月9日、グランドプリンスホテル高輪の宿泊サービスを再開する。
富士山5合目で休憩・宿泊場所を運営する富士山みはらし(山梨県富士河口湖町、井出幸雄社長)は、イオンの電子マネー「WAON」の決済サービスを始めた。中国人観光客が減少するなか、日本人登山者の利用に期待をかける。
東京ベイプラザホテル(千葉県木更津市)などを運営するシーエイチアイ(東京・港、露崎強社長)は12日、山梨県山中湖畔に中国人向けホテルを開業する。8億円を投じ、建設途中で放棄された土地建物を購入して全面改修。宿泊料金も割安に設定して、ビザ発行要件緩和などで急拡大する中国人の富士山観光需要を取り込む。
山中湖北岸の約1万平方メートルに地上6階、地下1階で延べ床面積1万2000平方メートルの「富士山ガーデンホテル本館」を開業する。夫婦と子ども1人の家族旅行に照準を定め、1室40平方メートルでベッドを3つ置く大きめの客室を中心に150室を設けた。宿泊客の9割を団体旅行と見込み、料金は団体で1人当たり1泊2食5300円と安めに設定する。
浴槽が木造の露天風呂を設け、レストランはすしと刺し身を目玉に据えて日本文化を楽しんでもらう。広さが350平方メートルと80平方メートルの売店を開き、ワインなど地元土産を仕入れて売り出す。北京出身で日本国籍を持つ露崎社長が設立した同社は2004年、現在の東京ベイプラザホテルを買収してホテル業に参入。山中湖南岸でも富士山ガーデンホテル(別館に改称予定)を運営している。